治し力を追求する中で生まれた
養生気功
私(矢山利彦)は、西洋医学の外科医としてスタートしたのですが、あるとき、 西洋医学だけでは病気は治せないことに気づき、東洋医学を学ぶことにしました。
漢方を勉強し、患者さんの治療に使ってみると、これが効くのです。そうすると患者さんが喜んでくれますから、うれしくなってまた勉強すると、今度はさらに治療が難しい患者さんが受診されるようになり、もっともっと勉強しなければいけなくなる ...ということで、どんどん東洋医学の世界にはまっていきました。
東洋医学を作った基本原理は「気」 です。
鍼も漢方も方法は完成されているのに、なぜここに鍼を打つのか、この生薬の組み合わせはどういう理論で誰が作ったのか、ということはほとんどわかっていません。 その疑問を解明しようと文献をひもとくのですが、ほとんど記載されていないのです。
文献でわかったことは、扁鵲さんという人が、脈を診たら身体の中が見えると言っていたということ、神農さんという薬草の神様が、自ら毒に当たりな がら薬草を選んだということ、それぐらいです。
西洋医学の場合、この薬は誰が開発したとか、この手術は誰が考案したとかいうことがすべてわかっていて、理屈が通っています。それゆえに新しい治療法が開発できます。西洋医学はシステムを構築する原理がみんなわかっているのです。
私は、東洋医学のシステムの構築方法がどうしても知りたくなりました。「気」について本を読んでもまったくわからないため、実践するしかありませんでした。
知識としてわかっていても、実際にやってみると全く違うことは多々ありますが、「気」もそうです。私は、 それを「気」の料理論と言っています。料理のレシピをいくら読んでも、実際にやってみないとおいしい料理はできません。これは自分でやるしかないなあということで気功を始めたわけです。
最初は漢方を試し、次に自分の身体を使って鍼を試してみました。 そうすると打ったところがとても 調子よくなり、「確かに効く」ということを体験しました。鍼で「響き」と言うのですが、じーんと来たり、ずーんと来たり、「おお〜来るなぁ〜」という気の流れの感覚です。
そうしていくうちに、だんだん「気」というのは単なる説明ではないなと実感してくるわけです。
そして「気」を取り入れたエクササイズをやり始めました。するとあるとき、手に何かぼわんぽわんとしたものを感じたのです。それが「気のボール」でした。「おお! これが気か!」という感覚でした。
そのうちに、自分の身体の周りに気のボールを動かすことができるようになりました。実はこれが 「小周天」です。
西洋で捨ててしまった「気」(生命エネルギー)という概念が、東洋でよく生き残ってきたなと思います。なぜ生き残ったかというと、それは、東洋医学の鍼や漢方が非常に効くという実例があるからです。
なぜ効くのかについては、科学的に少しずつデータは出ていますが、まだまだ未知の世界です。その東洋医学の基本原理、説明原理として 「気」が存在しているということです。東洋医学だけは、気のエネルギーというの発想を捨てませんでした。 これは、人間にとってものすごくありがたいことだと感じます。
東洋医学は、人間が生み出した知的な財産、システムとして、2000年以上前に完成していて、それがそのまま現在も通用しているわけです。例えば鍼は、いま西洋でも代替療法として認められています。よく考えてみると、200年以上前にできたものが、ずっと有効で、未来永劫有効なのです。 こんなすごいものがあるでしょうか。